最近、家族信託と呼ばれる制度が脚光を浴びています。一般社団法人家族信託普及協会のホームページによると、家族信託とは「特定の目的に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組み」で、後見制度よりも「柔軟」な財産管理が可能というメリットがあると言われています。
しかし、「柔軟」な財産管理が前面に押し出されることには、若干の違和感を覚えざるを得ません。すなわち、家庭裁判所が監督し、本人の財産は本人以外のために用いることができない成年後見制度でも、後見人による不正事案が後を絶たません。家庭裁判所の監督もなく、また、「本人の意向」の下で本人の財産を運用できる家族信託制度においては、財産管理の名の下に本人に著しく不利な資産運用がされても、それを発見することすら困難になるのではないかという懸念があります。
確かに、成年後見制度は本人の財産保護に力点が置かれておりますので、家族関係によっては利用しにくい一面があることも確かです。しかし、そのことが直ちに家族信託を利用すべきという結論には結びつかないでしょう。予想される老後に備え、自分達にとって最善の手段は何か、冷静な判断が必要なのではないでしょうか。