ちょっと遅くなりましたが、5月29日に行われた神奈川県弁護士会主催の相続セミナー&相談会に相談員として参加しました。セミナーも相談会も盛況で、本部で行われた相談会と同じ程度の参加者に恵まれました。やはり、「相続」については皆さん関心が高いと感じられました。
「何が「争続」を引き起こすのか」でも書きましたが、相続問題の根底には様々な要因がありえます。そして、専門家によって、あるいは相続人によって、抱える問題に対する評価も異なるため、全てを収めるような解決は極めて困難です。
例えば、共同相続人の一人に全財産を相続させるという遺言は、他の相続人がそれを了承していれば、事実上リスクはない、といえる状況になります。しかし、他の相続人が遺留分の行使を差し控えるかどうかは相続が開始するまで明らかでないため、専門家としては、全財産を相続させるという遺言について、遺留分の行使のリスクを指摘せざるを得ません。遺留分の行使に対して対策を行うとなれば、相続開始前に遺留分を放棄させるか、代償金を用意するということになりますが、その対策によって相続財産の構成に変化をきたすようであれば、事実上一人に全財産を相続させるという目的は達成できなくなります。
争続を引き起こさないということと、自分の意思を最大限実現したいということは、同じようでいて異なります。自分の死後に相続財産を巡って紛争を起こしてほしくないというのであれば、ある程度の妥協は必要といえるのかもしれません。