8月7日の投稿で、「預金・現金といった金融資産が乏しく、不動産が大半を占めていること」が「争続」を引き起こすと述べましたが、これについてもう少し説明したいと思います。
例えば、不動産と同額の預金・現金がある場合、特定の相続人が不動産を取得したとしても、他の相続人は預金を分割して取得することである程度の納得を得ることができます。しかし、預金・現金といった金融資産が乏しく、不動産が大半を占めている場合、不動産を取得した相続人とそれ以外の相続人との間で大きな不均衡が生じることになります。仮に、被相続人が遺言を遺していても、不動産の価額によっては、遺留分減殺請求が行使されるリスクが残ります。こうした事態に対する対策として代償金の交付が考えられますが、相続人に生活能力がないため被相続人と同居している場合などは、その相続人に資力がない場合が多く、現実的ではないことも多々あります。
そこで、このような場合に備えて、遺言を遺したうえで、受取人を同居の相続人とする生命保険契約を締結し、将来の遺留分減殺請求に備える財産を遺すという方法があります。つまり、遺留分侵害額相当額の生命保険金に加入し、受取人を同居の相続人とすることで、将来の遺留分減殺請求の際に、価額弁償として当該保険金を交付するという方法です。
こうした方法を用いる場合、遺言(公正証書遺言が望ましいのは、8月21日の投稿を参照。)を遺しておくことが大切です。遺言がないと、法定相続分に従って分割することになり、遺留分減殺請求の場合と比較して、代償金として必要な金額が増加するからです。
また、保険金受取人は遺言によって財産を取得する相続人とするべきです。一見、財産を取得しない相続人に保険金を用意した方が公平なようにも思えますが、そうした場合、保険金は受取人固有の財産であるため、財産を取得しない相続人は保険金を受け取ったうえで更に遺留分減殺請求権を行使することが可能になってしまうからです。