昨年から仮想通貨の話題をよく耳にすることになりましたが、仮想通貨について知識を得るため弁護士会の研修に参加しました。
電子マネーと仮想通貨の違い、仮想通貨の「売買」という意味、仮想通貨への差押えの手段、等様々な話題があり、大変興味深いものでしたが、個人的に一番気になったのは仮想通貨の「売買」の意味についてでした。
ブロックチェーン技術を用いた仮想通貨は、取引記録の記載に対する信頼が信用の主体であるということですので、仮想通貨を取得することは、本来ブロックチェーンの最終段階に売主と買主の取引が記載されることを意味するはずです。しかしながら、ある取引所の掲げる約款では、相対取引にせよ販売所との取引にせよ、指定した価格でもって売買契約が成立したとみなされるというのみで、売買契約の成立にともなって買主の地位がブロックチェーン上に記録されるかというと、そこには何ら触れられていないのです。
そうなると、買主は、仮想通貨を保有しているのではなく、仮想通貨相当分の価値の引き出しを請求できる債権的請求権しかないのではないか、ということになります。前者と後者の違いは、取引所の破たん時に明確になります。前者であれば、破産財団から仮想通貨の返還を求める(取戻権)余地がありますが、後者であれば、債権者として破産財団からの配当を受けるしかありません。仮想通貨をめぐる法律問題では、前提としてどのような形で仮想通貨の保有が認められているのか、その点の分析が大事なようです。