「日常」カテゴリーアーカイブ

自賠責保険における高次脳機能障害の認定(メモ)

自賠責保険における高次脳機能障害は、脳の器質的(解剖学的所見に認められるような性質という意味)損傷を前提とする高次脳機能に生じる障害を指す。

裁判上、高次脳機能障害の認定では、①頭部に加わった衝撃の程度、②意識障害の程度(JCS、GCS)、③精神症状の具体的内容が高次脳機能障害の典型症状(認知・行動・情緒障害)と合致するか、④精神症状の発症時期、⑤精神症状の推移(高次脳機能障害の場合、時間経過とともに軽快する)、⑥CT、MRI以外の異常所見の有無、⑦CT、MRIによる脳委縮、脳室拡大の信頼性、⑧画像所見の得られた時期(事故直後から3か月後までの経過がわかることが最善)、⑨他の診断(統合失調症、PTSD)の有無、⑩被害者の行動、状況、治療を受けているか、症状の経過等が判断のポイントとなる。

仮想通貨

昨年から仮想通貨の話題をよく耳にすることになりましたが、仮想通貨について知識を得るため弁護士会の研修に参加しました。

電子マネーと仮想通貨の違い、仮想通貨の「売買」という意味、仮想通貨への差押えの手段、等様々な話題があり、大変興味深いものでしたが、個人的に一番気になったのは仮想通貨の「売買」の意味についてでした。

ブロックチェーン技術を用いた仮想通貨は、取引記録の記載に対する信頼が信用の主体であるということですので、仮想通貨を取得することは、本来ブロックチェーンの最終段階に売主と買主の取引が記載されることを意味するはずです。しかしながら、ある取引所の掲げる約款では、相対取引にせよ販売所との取引にせよ、指定した価格でもって売買契約が成立したとみなされるというのみで、売買契約の成立にともなって買主の地位がブロックチェーン上に記録されるかというと、そこには何ら触れられていないのです。

そうなると、買主は、仮想通貨を保有しているのではなく、仮想通貨相当分の価値の引き出しを請求できる債権的請求権しかないのではないか、ということになります。前者と後者の違いは、取引所の破たん時に明確になります。前者であれば、破産財団から仮想通貨の返還を求める(取戻権)余地がありますが、後者であれば、債権者として破産財団からの配当を受けるしかありません。仮想通貨をめぐる法律問題では、前提としてどのような形で仮想通貨の保有が認められているのか、その点の分析が大事なようです。

魯迅公園の朝

昨年末、仕事の合間に上海に行ってきましたので、その感想を書きたいと思います。

タイトルにある魯迅公園は、上海市内の公園で、朝には太極拳やダンスのグループが練習をしておりました。

といっても、専用の練習場があるわけでなく、公園のそこかしこにグループで集い、それぞれ音楽をかけて練習しているだけです。太極拳のグループの横には社交ダンスの一段があり、剣舞のグループの横に胡弓の教室があり、隣のグループの音楽が耳に入って集中できないかと思うのですが、練習している人たちは特に気にすることもない様子でした。

こうした活動が、何らかのルールに基づいて行われているのか、よく分かりません。しかし、少なくとも公園内での練習活動を一律に禁止しているわけではなさそうです。近年、日本の公園では様々な活動を禁止していて、何もできない公園(空間?)も多いと聞きます。勿論、公園内での活動が無制限に許されるべきとは思いませんが、クレームの存在やその可能性を理由に、公園内での活動を一律に禁止するという結論には疑問です。問題となっている活動の性質を踏まえ、条件を設けるなどの柔軟な対応を行うべきではないでしょうか。

支払督促

支払督促とは、債権者の申立に基づき、裁判所書記官が債務者に金銭等の債務の支払いを行うよう督促する手続です。

支払督促の利点としては、債権者の主張に基づいて簡易かつ迅速に出せる、訴訟に比べ裁判所に納める印紙額が安い、といったことが挙げられます。通常訴訟の場合、第1回期日が入るまでに1カ月程度かかることも多いのですが、支払督促の場合、問題がなければ1カ月の間に支払督促が出されますので、スピード感は支払督促の方が圧倒的です。

勿論デメリットもあります。それが、申し立てる裁判所が、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所のみ、ということです。財産権上の訴えにつき通常訴訟を提起する場合、相手方の住所地の外に義務履行地である債権者の所在地についても管轄が認められていることとは大きく異なります。

この相違点は、遠方の債務者に対する手続時に顕著に表れます。支払督促に対して債務者が異議を申し立てた場合、相手方の住所地を管轄する裁判所で審理されることになります。このため、遠方の当事者が相手方となる場合、第1回期日への出廷のために相応の費用が発生することになります。この点、通常訴訟であれば、債権者の住所地で提起できるため、(移送申立が認められなければ)出廷費用の心配はあまりしないで済むことになります。

このように、特に少額の請求に当たっては、支払督促の利用について、相手方の異議申立を見越した検討が必要になると思われます。

最近の債務整理

私は、横須賀中央に行きつけの床屋があるのですが、そこではいつも同じ放送局のラジオ番組が流れています。そのラジオ番組では、何度も過払い金請求のCMが流れ、そのたびに某司法書士法人の名前が連呼されております。

しかし、実際過払い金請求のピークはとうに過ぎていると感じます。個人の事務所であれば年に数件相談があるかないか、といったところではないでしょうか。CMを流せば別なのかもしれませんが、CMの主は司法書士なので140万円以下の請求しか扱えないはずで、費用対効果に合うのかどうか、余計なお世話ながらいつも疑問に思って聞いています。ついでにいうと、そのCMで最高裁判決(最高裁平成18年1月13日判決?)から10年が経つことをしきりに強調していましたが、過払金返還請求権の消滅時効の起算点は取引完了時と考えるのが一般的なので、あまり関係がないように思えます。

また、債務整理の事案に関しても、数年前と状況が変化しているように感じます。数年前までは収入に比べて負債総額が多く、一見して返済不能という事案が多かったのですが、現時点では、住宅ローンを除けば、債権額は少額になり、任意整理などの選択肢も十分検討する余地がある事案が増えました。貸金業法における総量規制の影響もあるのかもしれません。社会的には破産を選択しないで済む人が増えることは望ましいことです。とにもかくにも、借金については早めの相談と対応が最善です。当事務所でも、随時相談を承っております。

ペーパーレス化に思うこと

今年から常議員として活動して感じるのですが、1回の会議で配布される資料が結構な数になります。常議員は40名いるので、毎回40名分の資料を印刷し、郵送するにはそれなりのコストがかかっていると思われます。

では、これをペーパーレス化すればコストの削減になるのでしょうか?一見するとそう思えます。しかし、サーバー上に資料をアップロードし、常議員が印刷するのでは、印刷コストの負担が弁護士会から常議員個人に移るだけです(常議員がPCを使って印刷をしなければ印刷コストは抑えられますが、タブレットやモバイルPCがなければ導入コストがかかる点では同じです。)。常議員に専用タブレットを貸与する方法はペーパーレス化は実現できても、導入コストが高くコストの削減にはつながらなさそうです。そもそも、タブレットやPCは、バッテリーが切れると使い物になりませんが、そこで弁護士会で印刷して渡すとなればペーパーレス化の意味がなくなります。なんとも難しい課題です。

この問題について私は、配布される資料に、審議に必須ではない資料があるのではないか、という視点で見るべきではないかと考えます。審議資料を絞り込むことで、印刷コストや郵送コストが抑えられるのであれば、そちらから取り組む方が有益ではないかと思うのです。また、審議資料の絞り込みは、ペーパーレス化を実現した際にも無駄にはならないと考えます。ペーパーレスを理由に審議資料が増大してゆけば、必要なサーバーの容量も多くなり、それだけコスト(レンタル料)が増えるばかりだからです。

ペーパーレス化は、言うは易く行うは難しという問題の典型例ではないかと思います。タブレットやモバイルノートを持ち歩く場合、万が一に備えてACアダプターやバッテリーを持ち歩くので、すぐに1、2キロの荷物になりますから、私自身は紙媒体の方が楽です。真のペーパーレスの時代が来るまではもう少し技術革新を待つほかないように思います。

 

支部交流会

去る4月16日土曜日に開催された関東弁護士連合会(関弁連)の支部交流会に出席してまいりました。

支部交流会とは、関弁連管内(関東地方、新潟、長野、山梨及び静岡)の弁護士会の支部会員が、支部における問題(合議制、労働審判、裁判官常駐)について話し合うという会合です。今年は、茨城県弁護士会土浦支部管内の茨城県鹿嶋市で開催されるとのことで、鹿嶋市とはどんなところか、支部交流会とはどんなものか興味が湧き、出席を決めました(本投稿の時点では、鹿嶋市は悪い意味で有名になってしまいました。)。

まず、横須賀市から鹿嶋市までのアクセスは、東京駅から高速バス(90分)が10分間隔で発車しているので、3時間程度で到着してしまいます。ここは意外なところでした。ただし、裁判所は鹿嶋市にはなく行方市にあり、名称も麻生支部といいます。神奈川のように、裁判所の支部と弁護士会の支部が一対一で対応していないことも印象に残りました。

さて、支部交流会の議題は、今後の支部に関する民事司法改革の運動をどのように展開していくかというものです。ご存知の方も多いとは思いますが、日本各地にある「裁判所」は、全てが同じ機能を有しているわけではありません。県庁所在地にある「本庁」には特殊な事件を除きほぼ全て事件を審理出来るのに対し、「支部」の中には合議事件・労働審判事件・裁判員裁判対象事件の審理が出来ないところや裁判官が常駐していないところがあります。更には、支部ではなく「出張所」が置かれているところもあります。理論上は、支部でできない事件は本庁で審理すればよいのですが、実際には本庁所在地までのアクセスが壁となり、法的解決をあきらめてしまうことも多いと言われており、居住地によって司法へのアクセスに差異が生じているというのが現状です。

こうした現状を解決するため、日弁連と最高裁は協議を重ねてきましたが、今年の一月に一つの回答が出されました。浜松、松本、福山の各支部において労働審判を実施するという内容が含まれており、一定の前進は見られましたが、日弁連にとって満足のいく回答ではなかったとのことで、今後の活動をどのように展開してゆくかについて、議論が交わされました。

私の感じたところ、司法アクセスの問題は、裁判所の人的・物的リソースの拡充という予算に直結する問題であり、そうである以上予算の適正配分という制約は免れないように思います。そうなると、人口増加地域における司法アクセスの解消に重点を置いた方策を優先すべきということになりますが、一方で裁判を受ける権利という憲法上の権利が問題となるため、予算の適正配分だけを突き詰めていけばいいということでもありません。難しい問題です。

後見制度支援信託③

今日は、支援信託についての実務的な感想をいくつか。

①財産について、自宅不動産の他、換価困難な不動産が存在しても信託の支障にはならなさそうです。賃貸不動産については、物件の管理が生じるので、換価しない限り支援信託には回せないと感じます。逆に言えば、絶対に処分出来ない財産がない限り、財産の内容は支援信託を否定する理由にはならないのではないでしょうか。

②被後見人が高齢である場合、支援信託に適さないとの見解があるようですが、実務上は90歳に近い年齢であっても支援信託の検討をお願いされるので、年齢は問題にならないと思います。

③信託銀行の選定ですが、ほぼ特定の銀行が選ばれているようです(私もその銀行しか選んだことがありません)。運用コストの問題かとも思ったのですが、調べたところ管理・運用報酬が無料とされている信託銀行が複数あったので、それだけでは説明がつきません。恐らく、横須賀中央にその銀行の店舗があり、店舗で手続きできるという安心感があるように思われます。これは地域によって異なるもので、横須賀中央特有の現象ではないかと思います。

④親族後見人の適性については、あまり議論されておりませんが、利益相反や横領行為は別としても、書類作成能力等について厳密な検討は求められているわけではなさそうです。

⑤一般に遺言のある場合は支援信託に適さないとされているものの、推定相続人の同意があれば移行しても良いとの見解があるようです。ただ、推定相続人は相続財産に対する期待権しか有しないという裁判例の立場と矛盾するように感じます。被後見人の最後の意思を尊重するという観点からは、遺言のある場合は支援信託に回すべきではないと感じますが、不正防止という点からは妙案が見つかりません。

遺言とエンディングノート

今週、エンディングビジネスについての講演を聞く機会があり、その中でエンディングノートと遺言について、「エンディングノートは法的拘束力はないが自由に書くことができるのに対し、遺言は一定の形式を守らなければならないものの法的保護が与えられる」という形で比較されていて、とても興味深く感じました。

従来、私はエンディングノートについてあまり肯定的な評価を持っていませんでした。エンディングノートが安価な遺言のように誤解される恐れがあると思っていたからです。しかし、次第に、自由に書けるエンディングノートには遺言にない良さがあるのではないか、遺言もエンディングノートもそれぞれ作成するべきではないか、と考えるようになっております。

例えば、相続財産の範囲については、時と共に変動するものですから、頻繁に書き換えることのできるエンディングノートの方が便利です(勿論、財産の処分は遺言による必要があります。)。日常使っていたサービスの内容(公共料金、インターネットプロバイダー等々)もエンディングノートに記した方が、解約がスムーズに行くと思われます。相続財産に当たらない生命保険についても、エンディングノートに記すことで請求漏れを防ぐことができます(生命保険を使った相続対策も、保険金が支払われなければ意味がありません。)。債務のある方は、それを記すことで、相続人が相続放棄などの対応が取りやすくなります。

遺言に対する法的保護は、相続財産の処分(及び認知・廃除等の身分行為)に限られます。しかし、それは被相続人が亡くなったことに伴う権利関係の清算の一部分にすぎず、相続人は、各種契約の名義変更・公的機関への届け出、祭祀の実行と様々な手続きを行うことが求められます。エンディングノートは、こうした諸手続を円滑に進める役割をになっているように思います。

窓辺の胡蝶蘭

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この写真は、去年7月の開業時に頂いた胡蝶蘭から出た芽を写したものです。花が落ちて数カ月後に花があったところから芽がぐんぐんと伸びてきて、遂に蕾が出来るまでに至りました。これから、花が咲くのではないかと期待しております。

この胡蝶蘭は、事務所の窓辺に置いて時々水や液肥を与えるといった程度で、それ以上生育に何もしておりません。温度管理も特にしない中で短期間にここまで育つとは想定していなかったので、改めて植物の持つ生命力の強さに驚かされております。

ところで、私は、インターネット上の情報を基に、三株のうち一株の茎の先端を切り、株の栄養が先端に行かないようにしていました。しかし、芽が出てきたのは先端を切った株ではなく、何もしなかった株でした。株同士の生命力の強さには違いがあるかもしれませんが、下手に何かをするよりはいっそ何もしないほうが良いということを示唆しているようで、とても興味深い出来事でした。私の弁護士業務がこの胡蝶蘭のように、「何もしないほうが良かった」と言われることが無いよう努力してゆきたいものです。