来年4月1日から、横浜弁護士会は神奈川県弁護士会に名称を変更します。
たったこれだけのことですが、横浜弁護士会では、ここに至るまで何度も総会で議論が重ねられ、何度目かの否決を経て可決に至りました。私は、会名変更を議論する総会に2度出席しましたが、1度目は午後1時に始まった総会が深夜0時頃に終了するという有様でした。2度目の総会は思いのほか短時間で決着しましたが、これは前回の総会において決議要件の3分の2に極めて近い数の賛成票が出たことから、大勢が決したと見ることもできるでしょう。ともかく、外部から見れば些細に見える会名変更に、多くの弁護士が議論に時間を費やしたことは、議論好きで理屈っぽい弁護士の面目躍如といえるかもしれません。
そうした観点からしますと、今般話題となっている国立競技場の設計変更問題の根底には、決定に関与した有識者たちにおける議論が決定的に不足していたという問題があるように思います。開示された議事録では、コンペの最優秀案について各委員が短く感想を述べて、それを計画案とすることを了承しておりました。日本的組織の常識で考えれば、有識者会議に求められる役割に忠実に従った結果といえるかもしれません。しかし、今にして思えば、そして、本来からすれば、有識者会議の段階で、建設コストや実現可能性についてより踏み込んだ議論をすべきであり、そうすれば計画決定後3年を経て計画の白紙撤回に至るような、無様なことにはならなかったのかもしれません。
意思決定の迅速化が叫ばれ、議論をすることが無駄のように扱われる今般、この2つの事例の結末はきわめて示唆に富んでいるように思います。