これまで民法の定める法定利率は5%でしたが、市中金利を大きく上回る状態が続いており、利息や遅延損害金の額が多額になる一方で、中間利息の控除の場面では不当に賠償額が抑えられるなど、当事者間の公平を害するという理由から、改正法の施行時に3%にまで引き下げられることになります。
改正理由の1つ目は分かりやすいですが、2つ目の中間利息の控除というのは主に交通事故によって後遺症が生じたときに問題となるものです。後遺症による逸失利益は、事故時の年収、労働能力喪失率及び喪失期間を基準として算定されますが、将来得られたはずの収入の価値と現在の価値は同じではないため、現在の価値へ引き直す必要があります。具体的には、金銭は法定利率による運用が可能であると考えて、1年ごとに5%の利息を控除していくことになります。
例えば、1年後に100万円の収入があるとした場合、現時点での当該収入の価値は95万2380円(小数点以下切り捨て)になります。しかし、そもそも5%の利息という想定は現実的ではなく(銀行の預金金利を考えれば明白ですね。)、それだけ被害者の得られる利益が低く見積もられているということになります(上記の例で法定利率が3%となった場合、現時点での価値は97万0873円に増加します。)。したがって、法定利率の引下げは、逸失利益の算定に当たっては被害者側に有利に働くことになります。特に若年者に重大な結果が生じた事故では、損害額に2000万円もの差が生じるという算定もあるので、慎重な検討が必要となるでしょう。
なお、これまで法定利率は固定金利でしたが、改正後は3年をめどにした変動制になります。また、6%と定められていた商事法定利率は廃止されます。