何が「争続」を引き起こすのか

私が所属する相活ステーションよこすかでは、円満な相続を実現するために日々活動しております。他方で、世間では争いになる相続があることも確かです。では、どのような相続が争いにつながりやすいのでしょうか。私がこれまで相談を受けた事例から、争いになりやすいポイントを考えてゆきたいと思います。

第一は、遺言が残されていないことです。遺言がある場合でも、遺留分侵害の主張がなされることはありますが、問題になる件数としては遺言がない場合のほうが多いように感じます。遺言は、法律上故人の最後の意思と扱われます。たとえ、生前被相続人から特定の財産を相続させると言われていても、遺言がなければその主張が認められるとは限らず、不満を残す結果となります。特定の財産(不動産、預金)を特定の相続人に遺したいと考えているのであれば、遺言を遺すことが重要です。

第二は、一部の相続人が遺産に関する情報を他の相続人に開示しないことです。この場合、開示されない相続人は不信感を募らせてしまい、後に開示されてもまだ隠しているのではないか、相続前に不正な引き出しがあったのではないか、という疑念を払しょくできず、話し合いによる解決が出来なくなり調停や審判に移行するという可能性があります。これを防ぐには、遺言の中に財産目録を付すか、別途エンディングノートなどに財産目録を書き加えておき、相続財産の範囲をめぐって争いが生じないようにすることが考えられます。

第三は、相続人間の交流が疎遠であることです。このことで直ちに争いが生じるものではありませんが、一旦疎遠になってしまうと話を持ってゆくにも気後れしてしまうと感じる方はいらっしゃるようです。この場合も、遺言があれば、遺産分割協議をしなければならないというプレッシャーから解放されることになります。

第四は、預金・現金といった金融資産が乏しく、不動産が大半を占めていることです。こうした事例では、不動産を売却して残代金を分割する方法がとられることが多いのですが、一部の相続人が不動産に居住していると売却は困難となり、かといって他の相続人の共有持分を買い取る資力がない、となると、問題が膠着して前に進めなくなります。遺言によって解決できる問題ではありませんが、生前から対策を行うことが重要になります。

第五は、2次相続により相続人の数が大幅に増加することです。兄弟姉妹が相続人になる場合が多いのですが、遺産分割中に相続人が死亡して、相続人の配偶者・子等が2次相続により相続人になると、相続人の数が多いために合意形成が難しくなる場合があります。遺言を作成して、早期に執行することで回避できることもあると思われます。

このように、私が経験した相談の中の「争続」は、相続人間のコミュニケーション不足や、遺産分割協議の停滞といった点に原因を求めることができる事案が多かったように思います。核家族化・高齢化の進行により、こうした状況は今後も増加することはあっても減少することはないと思われますので、「争続」とならないための活動も重要となるのではないでしょうか。

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