支払督促とは、債権者の申立に基づき、裁判所書記官が債務者に金銭等の債務の支払いを行うよう督促する手続です。
支払督促の利点としては、債権者の主張に基づいて簡易かつ迅速に出せる、訴訟に比べ裁判所に納める印紙額が安い、といったことが挙げられます。通常訴訟の場合、第1回期日が入るまでに1カ月程度かかることも多いのですが、支払督促の場合、問題がなければ1カ月の間に支払督促が出されますので、スピード感は支払督促の方が圧倒的です。
勿論デメリットもあります。それが、申し立てる裁判所が、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所のみ、ということです。財産権上の訴えにつき通常訴訟を提起する場合、相手方の住所地の外に義務履行地である債権者の所在地についても管轄が認められていることとは大きく異なります。
この相違点は、遠方の債務者に対する手続時に顕著に表れます。支払督促に対して債務者が異議を申し立てた場合、相手方の住所地を管轄する裁判所で審理されることになります。このため、遠方の当事者が相手方となる場合、第1回期日への出廷のために相応の費用が発生することになります。この点、通常訴訟であれば、債権者の住所地で提起できるため、(移送申立が認められなければ)出廷費用の心配はあまりしないで済むことになります。
このように、特に少額の請求に当たっては、支払督促の利用について、相手方の異議申立を見越した検討が必要になると思われます。