今回の民法改正では、従来瑕疵担保責任と呼ばれる分野が大きく改正されました。これまでは、売買の目的物を特定物と不特定物に分類し、特定物の売買における瑕疵についての責任を瑕疵担保責任として処理してきました(特定物ドグマ)。今回、この特定物ドグマという考え方は改められ、売主は契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務を負うとされ、買主は損害賠償請求の他、修補や代替物の引き渡し、代金減額請求が出来るという条文が追加されました。

 例えば、100万円で中古自動車を購入するという売買契約の場合、これまでは自動車に問題があったとしても、損害賠償請求という形でしか請求できませんでしたが、改正法では買主に対して修理を求めることも、同程度の別の中古車の引き渡しを求めることも(法的には)可能になったということです。

 しかしながら、細かい部分の議論は裁判例によって決着せざるを得ません。上記の例でいえば、買主から代替物として別の自動車の引き渡しを求められた場合、売主がそれに従う義務があるのか、修理の申し出をして代替物の引き渡しを拒むことができるのか(新法562条1項ただし書)あるいはその逆の相談(中古自動車ディーラーであれば代替物の引き渡しの方が容易かもしれません。)が頻発するように思います。トラブルの回避には、趣旨には逆行しますが、個人間売買でも瑕疵担保責任条項の排除及び事前の重要事項説明が必要となってくると考えます。

 上記の例で挙げた自動車のように、一見すると工業製品として性質が均一なように見えても、年式、グレード、車体の色、走行距離、修理歴、ワンオーナーかどうか(譲渡歴)といった様々な差異があり、しかもその差異が販売価格(買取価格)に影響しているという実態や、工業製品の電子化が進み容易に修理を行えない実態がある中で、今回の改正が取引実務に対してどのような影響を及ぼすのか、今後の裁判例の集積を待つ外ないのかもしれません。