法務局保管遺言(勝手に命名)という選択肢

 これまで、弁護士が遺言の作成を勧める場合、自筆証書遺言よりは公正証書遺言が良いと言われてきましたが(「専門家が公正証書遺言を勧める理由」)、平成32年7月10日以降は、自筆証書遺言を法務局に保管することも検討する必要があります。
 平成32年7月10日に施行される法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号。遺言書保管法)は、 一定の要件を満たした自筆証書遺言(ここでは、法務局保管遺言とします。)を法務局で保管するという制度ですが、この法務局保管遺言は、自筆証書遺言なのに検認が不要とされます(法11条)。

 更に、遺言書保管法と並行して行われた民法改正により、自筆証書遺言のうち財産目録の自筆が不要とされ、より簡易に自筆証書遺言が作成できるようになりました(民法968条 こちらは平成31年1月19日に施行済)。こうなると、今後は、遺言の作成の相談を受けた際に単純に公正証書遺言を勧めるだけでは問題がありそうです。では、公正証書遺言と法務局保管遺言、それぞれどのように使い分ければいいのでしょうか。法務局保管遺言の方式が固まっていない状況ですが、少し考えてみたいと思います。

 まず、本文を書くことができない状態であれば、公正証書遺言によらざるを得ないでしょう。また、法務局保管遺言は法務局に本人が出頭する必要があるので(法4条6項)、入院や入所によって出頭が困難な場合も公正証書遺言が利用しやすいといえます。なお、当然遺言能力は必要です。

 それ以外の場合は、公正証書遺言と法務局保管遺言の優劣はあまり考えられないように思われます。公正証書遺言は証人2人が必要となり、作成手数料も必要になります。他方で、法務局保管遺言にしても、全ての法務局が遺言を保管するかどうかは不明ですし、額は不明ですが手数料を収める必要もあります。遺言者の身体的的状況、遺言内容等を踏まえて検討してゆく必要がありそうです。

  

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